2011年 02月 19日
『ある戦慄』 |
「そのうち、刺されると思うよ」
妻からよく言われるセリフである。実際そうかもしれない。
若かりし頃のマーティン・シーンやボー・ブリッジスが主演した『ある戦慄』という'67年のアメリカ映画がある。
前半はグランドホテル方式で登場人物たちの背景を描き、後半はその人物たちが偶然居合わせた深夜の電車のなかで、バイオレンスが展開される。酔っ払って人を殺めたチンピラの二人組が、抵抗できない人々に嫌がらせを繰り返す密室ノワールだ。
その映画を意識していたわけではないが、つい数時間前のエピソードを。
アルコール疲れの東京出張からの帰り。空港から家路へ向かう地下鉄の中である。
座っていた僕の真横に立ち、ロッテ・グリーンガムの包み紙をポイと床に放り投げ、クチャクチャ噛み出した男がいた。推定年齢48歳。サラリーマンにしては少しくだけた服装。やや顔が赤い。おそらく酒を飲んでいるのだろう。
その時点でカチンと来て控えめに睨みつけていたのだが、そのあと男は、車両の床にペッペ、ペッペと唾を吐き出した。周囲はあからさまに迷惑そうな顔をしている。僕は近年、性格が丸くなったと評判なのでグッとこらえて、あたりをみた。20歳代と思しき若いサラリーマンがいる。「おいおい、俺はキツイから若いの何か言えや」と目で訴えたが、目を伏せられる。
また始まった。カーッ、ペッペ、ペッペ。
ムカムカムカムカ。体温が一度くらい上がる。
よし、まずは冷静に、感情を押し殺したテノールで言おう。
「ちょっと、唾吐くのやめてもらえませんかね?」
男はコクリと頷いたが、また次の瞬間、カーッ、ペッ。と僕の足元に唾を吐いた。
・・・。そうきたか、でも僕も丸くなったと評判の大人だ。穏便な解決をはかろう。深呼吸をして、穏やかに穏やかに・・・。
「マテ、コラァキサマ!!イマツバハクナッテイウタロウガゴルァキサマー!!!!クsskづいえhデlskaldjas;jfd;oahfp;wepourfpuwopeyoifypuwepヒロエ、フケ!!!!!!」思わず三輌先まで聞こえそうな大声で叫んでいた。これが深作欣二の映画だったら、後世まで語られる迫真の演技である。気づいたらミラネーゼを凌ぐ華麗な巻き舌を駆使していた。
あーあ、また言ってしまった。もう歯止めがききません。
その後、「申し訳ありません」というだけで何もしない男に対して、僕はずっと「捨てたゴミを拾ってください」「ツバを拭いていただけませんか」というメッセージを九州版の横山やすしさながらにしつこく伝え続けた。
事情を知る間近の乗客たちは少しだけ好意の宿った表情でみてくれていたが、ほかは完全に引いている。
ひょっとしたら、僕を加害者として見ている人の方が多いのかもしれない。
それもそうだ。直接、唾吐きやゴミ捨てを目の当たりにしなければ、車輌で怒鳴っている僕のほうがマナー違反である。いや、目にしていたとしても、もっと穏やかな解決をするべきだと考えるのが普通なのだろう。
2月18日、22:00くらいにあの車輌に乗り合わせた人がいたら申し訳ありませんでした。
私の未熟さゆえの騒ぎでございます。
妻の言うようにそのうち突然路上で刺されるかもしれないが、刺殺された、というのは僕の美意識的にはアリである。
妻からよく言われるセリフである。実際そうかもしれない。
若かりし頃のマーティン・シーンやボー・ブリッジスが主演した『ある戦慄』という'67年のアメリカ映画がある。
前半はグランドホテル方式で登場人物たちの背景を描き、後半はその人物たちが偶然居合わせた深夜の電車のなかで、バイオレンスが展開される。酔っ払って人を殺めたチンピラの二人組が、抵抗できない人々に嫌がらせを繰り返す密室ノワールだ。
その映画を意識していたわけではないが、つい数時間前のエピソードを。
アルコール疲れの東京出張からの帰り。空港から家路へ向かう地下鉄の中である。
座っていた僕の真横に立ち、ロッテ・グリーンガムの包み紙をポイと床に放り投げ、クチャクチャ噛み出した男がいた。推定年齢48歳。サラリーマンにしては少しくだけた服装。やや顔が赤い。おそらく酒を飲んでいるのだろう。
その時点でカチンと来て控えめに睨みつけていたのだが、そのあと男は、車両の床にペッペ、ペッペと唾を吐き出した。周囲はあからさまに迷惑そうな顔をしている。僕は近年、性格が丸くなったと評判なのでグッとこらえて、あたりをみた。20歳代と思しき若いサラリーマンがいる。「おいおい、俺はキツイから若いの何か言えや」と目で訴えたが、目を伏せられる。
また始まった。カーッ、ペッペ、ペッペ。
ムカムカムカムカ。体温が一度くらい上がる。
よし、まずは冷静に、感情を押し殺したテノールで言おう。
「ちょっと、唾吐くのやめてもらえませんかね?」
男はコクリと頷いたが、また次の瞬間、カーッ、ペッ。と僕の足元に唾を吐いた。
・・・。そうきたか、でも僕も丸くなったと評判の大人だ。穏便な解決をはかろう。深呼吸をして、穏やかに穏やかに・・・。
「マテ、コラァキサマ!!イマツバハクナッテイウタロウガゴルァキサマー!!!!クsskづいえhデlskaldjas;jfd;oahfp;wepourfpuwopeyoifypuwepヒロエ、フケ!!!!!!」思わず三輌先まで聞こえそうな大声で叫んでいた。これが深作欣二の映画だったら、後世まで語られる迫真の演技である。気づいたらミラネーゼを凌ぐ華麗な巻き舌を駆使していた。
あーあ、また言ってしまった。もう歯止めがききません。
その後、「申し訳ありません」というだけで何もしない男に対して、僕はずっと「捨てたゴミを拾ってください」「ツバを拭いていただけませんか」というメッセージを九州版の横山やすしさながらにしつこく伝え続けた。
事情を知る間近の乗客たちは少しだけ好意の宿った表情でみてくれていたが、ほかは完全に引いている。
ひょっとしたら、僕を加害者として見ている人の方が多いのかもしれない。
それもそうだ。直接、唾吐きやゴミ捨てを目の当たりにしなければ、車輌で怒鳴っている僕のほうがマナー違反である。いや、目にしていたとしても、もっと穏やかな解決をするべきだと考えるのが普通なのだろう。
2月18日、22:00くらいにあの車輌に乗り合わせた人がいたら申し訳ありませんでした。
私の未熟さゆえの騒ぎでございます。
妻の言うようにそのうち突然路上で刺されるかもしれないが、刺殺された、というのは僕の美意識的にはアリである。
by cassavetes69
| 2011-02-19 03:26
| その他
|
Comments(4)
Commented
by
f-snowgirl at 2011-02-21 18:21
cassavetes69さんのクレイジーな一面(失礼)にすっかり
惚れ直しました。
まったくもって、お怒りごもっともだと思います。
近くで、拍手喝采したかったです。
惚れ直しました。
まったくもって、お怒りごもっともだと思います。
近くで、拍手喝采したかったです。
0
Commented
by
cassavetes69 at 2011-02-24 00:35
f-snowgirlさんのその拍手を涙ぐんで聴いております。
この世にたったひとりでも理解者がいるというのはありがたいものです。道徳感はきわめて薄いのですが、この手の輩は許せないんですよね。
在校生が軽トラを運転して登校するような、超絶ヤンキー中学の出身のため、一度スイッチが入ってしまうと舌がノってしまいます。と言いながらその瞬間もどこか醒めていて、周囲の反応などを見てしまうわけですが。
徐々に温度を上げていくとお互いに喧嘩になるので、いきなり天麩羅があがるくらいの、170℃くらいから入っていくのがコツです。
この世にたったひとりでも理解者がいるというのはありがたいものです。道徳感はきわめて薄いのですが、この手の輩は許せないんですよね。
在校生が軽トラを運転して登校するような、超絶ヤンキー中学の出身のため、一度スイッチが入ってしまうと舌がノってしまいます。と言いながらその瞬間もどこか醒めていて、周囲の反応などを見てしまうわけですが。
徐々に温度を上げていくとお互いに喧嘩になるので、いきなり天麩羅があがるくらいの、170℃くらいから入っていくのがコツです。
Commented
at 2011-02-24 02:33
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
cassavetes69 at 2011-02-26 11:20