『冒険者たち』 |
とにかくオープニングから瑞々しい映画である。そして恐ろしく不安定な映画である。この映画は監督ロベール・アンリコの映画として語られることは少ないだろう。アラン・ドロンとリノ・ヴァンチュラとジョアンナ・シムカスによる、甘い、甘いフィルム・ノワール。
フランソワ・ド・ルーベの揺れるような旋律で始まるテーマ曲。それが急に突き抜けるような口笛の叫びに変わる。3人が纏う穏やかなフレンチアイビーさえも、この映画の重要な構成物となっている。
しかし、僕はこの映画がまぎれもない傑作だと言い放つことが出来ないでいる。この映画には媚薬のようなエッセンスが映画と寄りそうように散りばめられていて、我々の目を眩ましているような気がする。例えばノスタルジー。僕は、特にこの時代に例えようのない特別な想いを抱えているので、どうしても僻目になっているような気持ちが拭い去れない。粗さが多い映画であることは判っているが、それを補う力がどこかで働いていて、はたしてそれが、映画そのものが持つ力なのかという問いに、確かな答えが出せないでいる。
はっきりしていることは、僕がこの映画をとても好きで、強い思い入れがあるということだ。
-友、車、工場、女、飛行機、パリ、バイク、海、海底、財宝、愛、銃、死-
危険な童話のように甘く、若く、そして脆い。この脆さこそが、この映画が熱狂的に支持される理由かもしれない。
ラストシーンでアランドロンの呟くような歌を前に、我々は「儚い」という言葉を思い出すことになる。