2009年 12月 30日
『4ヶ月、3週と2日』 |
福岡の歓楽街、中洲に行くと多くのルーマニア人の女性にめぐり逢える。
しかしそんな光景が一般化したのも、チャウシェスク政権が崩壊して、だいぶ経ってからのことだ。
クリスティアン・ムンジウ監督による2007年のカンヌ映画祭パルムドール受賞作は、まだルーマニアがチャウシェスク政権下にあった1987年を舞台にしている。
『4ヶ月、3週間と2日』というタイトルは、多くの人が予想するとおり女性が妊娠してからの期間を示す。人口の急増を目指していた当時の政権では、妊娠中絶は違法である。その日は誰にとって訪れた日なのだろうか。物語の当事者は、果たして誰なのか。一人の女子大生の痛みに満ちた1日を切り取ったフィルムの背景が次第に明らかになっていく。
何よりも観客の記憶に深く刻まれるのは、一番の当事者であるべき女の身勝手で他人まかせな振る舞いと、無意識に必要の無い領域まで深く干渉してしまうもう一人の女の共依存的な関係の描写である。
恋人宅で知識階級の群れに囲まれた女学生の、居心地の悪い食事の風景。
サスペンス感溢れる、夜のストリートの危うい映像。
忌むべき目的のために急いで階段を駆け上がる行為のやるせない切迫感。
客観的には異常でしかないが、その場に居合わせた者だけが「正しさ」を共有することができる主人公の痛ましい決断。その決断を観客も、複雑な思いで受け入れざるを得ない。
色彩の薄い、硬質の冷たさを抱えた映像と共に。
物語冒頭の、何気なく感じられるいくつかのやり取りが後半に効いてくるフィルムである。
罵るべきシーンの存在をいくつか頭の中でピックアップしながら、エンドロールの瞬間には、なぜか大目に見たくなっているのは何故だろうか。クリスティアン・ムンジウの持つ愛嬌だけが理由だろうか。
忌むべき対象であるようで、どこか許せてしまう映画なのである。
その理由は、長い時間をかけて探っていくことにしよう。
実は先週末、驚きの報せが届いた。
来年46歳になる兄が第一子を授かったらしい。
おめでとう。
しかしそんな光景が一般化したのも、チャウシェスク政権が崩壊して、だいぶ経ってからのことだ。
クリスティアン・ムンジウ監督による2007年のカンヌ映画祭パルムドール受賞作は、まだルーマニアがチャウシェスク政権下にあった1987年を舞台にしている。
『4ヶ月、3週間と2日』というタイトルは、多くの人が予想するとおり女性が妊娠してからの期間を示す。人口の急増を目指していた当時の政権では、妊娠中絶は違法である。その日は誰にとって訪れた日なのだろうか。物語の当事者は、果たして誰なのか。一人の女子大生の痛みに満ちた1日を切り取ったフィルムの背景が次第に明らかになっていく。
何よりも観客の記憶に深く刻まれるのは、一番の当事者であるべき女の身勝手で他人まかせな振る舞いと、無意識に必要の無い領域まで深く干渉してしまうもう一人の女の共依存的な関係の描写である。
恋人宅で知識階級の群れに囲まれた女学生の、居心地の悪い食事の風景。
サスペンス感溢れる、夜のストリートの危うい映像。
忌むべき目的のために急いで階段を駆け上がる行為のやるせない切迫感。
客観的には異常でしかないが、その場に居合わせた者だけが「正しさ」を共有することができる主人公の痛ましい決断。その決断を観客も、複雑な思いで受け入れざるを得ない。
色彩の薄い、硬質の冷たさを抱えた映像と共に。
物語冒頭の、何気なく感じられるいくつかのやり取りが後半に効いてくるフィルムである。
罵るべきシーンの存在をいくつか頭の中でピックアップしながら、エンドロールの瞬間には、なぜか大目に見たくなっているのは何故だろうか。クリスティアン・ムンジウの持つ愛嬌だけが理由だろうか。
忌むべき対象であるようで、どこか許せてしまう映画なのである。
その理由は、長い時間をかけて探っていくことにしよう。
実は先週末、驚きの報せが届いた。
来年46歳になる兄が第一子を授かったらしい。
おめでとう。
by cassavetes69
| 2009-12-30 02:10
| 映画
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