メルヘン |
いや、民話や説話が嫌いというわけではない。
正確に言えば、メルヘンチックなことを何の臆面もなく平気な顔して言う人に鳥肌が立ってしまう。ひらがなで「めるへん」と書かれた字面を見るだけで、つわりの症状が出てしまうくらいだ。
たとえば、子供から、「雨はなんで降るの?」とよく聴かれるが、
「それはねぇ、お空の雲のうえにすんでいる女神さまが悲しくて泣いているんだよ~」
などと答えることは断じてない。5年に1回くらいは言ってもいいが、子供は4歳なのでまだ言う機会に恵まれていない。
「空気中の水蒸気が水滴になって落ちてきているんだ」
と答えているが、それでも「ふーん」と一応納得している。妻からは、「なんて夢のない答え方するの」と非難されるが、子供なんて言い切ってしまえばたいてい納得する。曖昧な回答をするからつけこまれるのだ。第一、僕は嘘をついていない。
とはいえ、本を読みながら双子の質問に適当な回答をしていると、しつこく食い下がってくることがある。だれ?どこ?なに?といつまでもループして五月の蝿よりうるさい。ニュースをみていて、放火現場の近所でインタビューを受けている人を「これ、だれ?」と聞かれても答えようがないが、「知らない」とか「ただのおばさん」いう回答を子供は許してくれない。妻などはいつも正直に答えて、子供から不満をぶつけられ、逆にイライラしている。学習しないヤツだ。
僕はそのつど、「インドで綿花栽培をしている人だ」とか、「アスワンハイダムを作った人だ」とか、「コンスタンチン君の火傷を治したお医者さんだ」と答えて納得させて(黙らせて)いる。
たまにキーワードに引っかかってしまって、それから壮大なストーリーを展開する羽目になることもあるのが危険ではあるが。
先日もニュースへの質問を適当に答えていたら、「鳩山邦夫がネバーランドを買収して、野望である蝶の国を建国して国王に就任しようとしているところに、巨大になった勝間和代がそれを阻止しようとロードレーサーで時速70キロで走ってきて鳩山記念館に体当たりしたら戦争になった」話へ発展し、大掛かりな聖戦のストーリーを即興で組み立てることになってしまった。子どもは夢中で聴いていたが。
うーん、これも立派なメルヘンだと言われれば否定しようがない。
冒頭発言撤回。僕はメルヘンな男だ。