Afterhours *69
2021-12-22T01:48:32+09:00
cassavetes69
映画、音楽、食、本、モノ、酒、・・・その他
Excite Blog
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
http://cassa.exblog.jp/30895061/
2021-12-22T01:48:00+09:00
2021-12-22T01:48:32+09:00
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cassavetes69
映画
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のラストに顎を外して呆然とした彼に、デヴィッド・クローネンバーグの最高傑作をどうしても観せてやりたかった。
16歳の息子と深夜2時からこの作品に向かい合うことになった。
オープニング、あきらかにいかがわしい男たちが車でゆっくりと街を横切っていくときの不穏な空気からもたらされる胸のざわつき。
このシーンだけで、この映画がただならぬ作品であることを予見させる。
「殺し」という行為に感覚が麻痺している残忍な輩たちと、穏やかな家庭を育み、地元の常連から愛されるコーヒーショップを営む男との接近によって物語は急速に展開していく。ヴィゴ・モーテンセンの抑制された表情に、映画ファンであれば誰しもがこの後の変貌の展開を期待するわけだが、その変貌の有り様が慎ましく、単なる覚醒とは違う複雑な表情を帯びる。彼はただ、元々できることをやってのけただけなのだ。
エド・ハリスは私の贔屓の俳優だが、この映画での存在感は特に素晴らしい。
暴力の恐ろしさと快楽を知り尽くした男が、その最も効果的な行使の仕方を手繰り寄せているような静かな威圧。
周到に計画を張り巡らせた男に訪れる予期せぬ最期。これこそがバイオレンス映画の醍醐味である。
暴力という行為ではなく、存在についてここまで深く静かに映像で問いかける作品は極めてまれであり、私はそこに魅了されている。
理性的な抑制から暴力を回避したい感情がある一方で、暴力を行使することへのカタルシスは思わず溢れてしまう。しかもその血は子供にも継承されている。
また、暴力によってもたらされた恐怖と興奮が性欲へ結びついていく様も見事に描かれていて、クローネンバーグの感性に頭を垂れた。
タイトル通り暴力についての映画ではあるが、その不条理さと多面性を語りかけた外国映画はブレッソンの『ラルジャン』以来ではないかと慄然とした。
エンドロールで、息子に「どうだ?」と聴いたら彼は「うん」とだけ応え、そのまま画面をずっと見届けた。
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世迷言ですが
http://cassa.exblog.jp/29926669/
2020-02-19T00:46:00+09:00
2020-02-19T00:46:48+09:00
2020-02-19T00:46:48+09:00
cassavetes69
未分類
母のこと
http://cassa.exblog.jp/28564856/
2018-08-15T16:14:00+09:00
2018-08-16T16:26:51+09:00
2018-08-15T16:14:41+09:00
cassavetes69
その他
五月の終わりに母が肺腺ガンであることを聞かされた。まだ自覚症状も全くなく元気で検査を待っていたのだが、その1週間後に軽い脳梗塞を発症し、ガンもステージ4まできていることがわかり入院することになった。そこから坂道を転がるように容態は急変し六月の後半に母は逝った。私はまともな会話も交わすことができず、昏睡状態に陥っていく母の姿を見守っているだけだった。
元気な姿で最後に会ったのは子供たちの中学の入学式の日。入学のお祝いを受け取り、一緒に中華料理を食べに行った。五目麺を平らげる母の姿に体の異変など露ほども感じなかった。
最後に会話をしたのは母の日。膝の悪い母に新しく贈った杖に対してのお礼の電話だった。30秒ほどの会話で、「はいはい、じゃあね」といつも通り淡泊なやりとりだった。新調した杖を使うことが出来たのは3週間程度だったことになる。
母の意識が混濁し始めた六月上旬。実家に行くと家の至るところに生けてあった花が、ことごとく萎れていた。大阪から、東京から、私は毎週末病院へ見舞いに行ったが、すでに会話をすることは叶わなかった。ただし呼び掛けには辛うじて動く左足と右目で、懸命に応じてくれていた。
亡くなる十日前。まだ耳は聞こえているであろう母に、ふたりきりの病室でお礼とも報告ともつかないような話をした。
まともに育ててもらったこと。いい孫たちが揃っていること。私のいまの境遇について。そしてあなたが育てた姉弟三人、仲が良いこと。
それらはあなたのお蔭です。ということを伝えた。生まれて初めて母にお礼らしき言葉を述べた。聞こえているかのような反応はあったが、実際はどうだったのかわからない。とにかく、優しい言葉を掛けてあげるには遅すぎた。
亡くなった、という報せを受けても、もう悲しくはなかった。あんな姿の母をこれ以上見続けることのほうが余計につらかった。
このところ病院で会っていた母よりも、棺のなかで穏やかな顔で横たわっている亡骸のほうがむしろ私の知っている母の姿だった。
私はそれからも人前で涙を流すことはなかった。母がつよい男の子として育ててくれたからだ。
親戚からは、やさしい兄や面倒見のいい姉と比較して、冷たい次男だとみられたかもしれない。
父も気丈に振る舞い、通夜、告別式ではみごとな挨拶だったが、ふと弱気な言葉も漏らすことがあった。
気持ちの準備もつかぬままの、85歳、男ひとり暮らし。さぞ不自由ではあるだろう。さびしくてたまらないだろう。
四十九日で実家に帰って、あの声が響かないこと、家のあちこちに生けられた花がないことに母の不在を感じた。
これからは正月の雑煮も、春の山菜づくしの料理を楽しみにすることもできない。そうやって、我々は生活の変化を受け容れていくしかないのだろう。
確かなのは、どうあがいても手に入らなくなるものが、人生にはある日訪れるということだ。
もう少し、丁寧に生きてもいいのかな。
うだるように暑い夏の日のなかで、そう考えさせられた。
さて、来週は夏休みだ。
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近況など
http://cassa.exblog.jp/27116385/
2017-09-15T11:15:00+09:00
2017-09-15T17:08:07+09:00
2017-09-15T11:15:34+09:00
cassavetes69
その他
福岡に家族を置いての大阪での5年目の単身赴任。ただし2年前から平日の半分は東京でホテル住まいをしている。
週末は隔週で福岡に帰る。毎週、毎週、新幹線で行ったり来たり。疲れが溜まる。
このブログと共に育った双子も、6年生になった。おとなしくてマジメできちんとしていて手のかからない子どもたちだ。
息子は手塚治虫のマニアとなり、娘は書道家になりたいと言っている。
今週はふたり揃って習字の「観峰賞」とかいうのを獲得したらしいので客観的にみてもなかなかうまいのだろう。息子は一緒に映画の話ができるようになった。
私はただ暇があればひとり酒を呑んでいる毎日で、大病こそしていないが、あちこちガタが来ている。結石からの血尿も何度か。
身体の厚みも少しずつ増してきている。
読書量はやや落ちた。劇場で映画を観る回数も減った。今月は『ベイビー・ドライバー』と『ダンケルク』を観たくらいか。『ダンケルク』については少しばかりここに悪口を連ねてみたくもあるが、そこまでの気力も怒りもない。
邦画は以前よりもきちんとフォローするようになった。昨年は『ダゲレオタイプの女』(邦画ではないが日本人監督なので)、『淵に立つ』『ディストラクション・ベイビーズ』など、なかなかの豊作の年であったと思う。
いちばん変わったのは料理を日常的にするようになったことだ。ストウブの鍋、南部鉄器の卵焼き、LODGEのスキレットなどを駆使してそれなりに食べられるものをつくり、京都と福岡で調達した和食器に盛るのを楽しみのひとつにしている。日経平均株価よりも高い弁当箱も買った。相変わらずモノが好きなのだ。
今日は会社を休んでいまから福岡に帰るのだが、きまぐれにブログを開いてどうでもいいことを書いてみた。
たまに訪問してくださる、おそらく1人か2人くらいの人に対して、まだ生きていることをお知らせしておきたいと思う。
それでは、また。
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『FEMME FATALE』 VELVET UNDERGROUND
http://cassa.exblog.jp/24574546/
2015-06-11T00:33:00+09:00
2015-06-11T00:37:59+09:00
2015-06-11T00:33:27+09:00
cassavetes69
音楽
帰りの新幹線は映画を1本観るのにちょうどいい。
今日は宮沢りえ主演で評判になった『紙の月』という日本映画を観た。
映画の内容はさておき、エンドロールに流れる主題曲はこれだったんだな。
VELVET UNDERGROUNDの『FEMME FATALE』
私はこの曲と”ファム・ファタール”という響きが好きでして。Tracey Thornのカバーも繰り返し聴いた。
映画は2時間を飽きさせないつくりになっていて、役者たちの演技も充実していた。
でも、この映画の目線でいえば、宮沢りえは”ファム・ファタール”とは言えないよね。]]>
『サンドラの週末』
http://cassa.exblog.jp/24570566/
2015-06-09T22:08:00+09:00
2015-11-28T16:44:41+09:00
2015-06-09T22:08:42+09:00
cassavetes69
映画
これまでの作品のなかで最も穏やかで、そして寓話的なのだ。
金曜日。
鬱病から復職しようとしていたサンドラは勤め先から突然、解雇通告を受ける。会社が16人の同僚に「サンドラの復職か特別ボーナスの支給か」という選択を迫ったのだ。投票では主任の裏工作もあり、多数の社員がボーナスを選んだ。
同僚に手を引かれ、社長に直談判してようやくとりつけた週明けの再投票。
自分の生活と同僚への配慮のなかで気持は揺れる。月曜日へ向けて、サンドラは諦めと望みの交錯する「説得の週末」を迎える。
主演は『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』で注目を浴びたマリオン・コティヤール。昨年もジェームズ・グレイの『エヴァの告白』で見事な演技で存在感を示した。
ハリウッドでも良い監督たちと仕事をしている、いま最も注目されているスター女優である。
ダルデンヌ兄弟が彼女を指名したのは意外でもあったが、全編ほぼノーメイクで、地方の労働者階級の女を違和感なく演じきり、観客に「自らへの報酬か隣人への情けか」という設問を投げかける。
映画音楽は今作では元通り排除した。劇中に流れるのはラジオからのロックである。
ゼムの『グロリア』。ヴァン・モリソンのシャウトがダルデンヌ映画で響くのは些か居心地が悪かった。
今作での「逃走」は切迫感のある疾走ではなく、疲れ果ててベッドに倒れ込むこと。
そして「反復」は同僚たちの訪問でチャイムを押すことであり、電話を掛け続けることであり、薬と水を飲むこと。
サンドラは何度も劇中に水を飲む。大量に飲む。
私としては、本作の光と微笑みのラストシーンよりも、ペットボトルの水を飲みながら審判を待っているシーンでエンドロールでもよかったのではないかと思ったほどである。果たして結論は必要だったのか。
前作『少年と自転車』でも感じたことだが、ダルデンヌ兄弟はまた一歩、穏やかさと優しさに近づいた。心地よい満足を得ながらも、それが私には、作家としての弛緩とも感じるのだ。]]>
『やさしい女』
http://cassa.exblog.jp/24538647/
2015-05-31T23:16:00+09:00
2015-05-31T23:17:08+09:00
2015-05-31T23:16:08+09:00
cassavetes69
映画
1969年にロベール・ブレッソンによって撮られた『やさしい女』がデジタルリマスター版で公開されることになった。
日本で初公開された1986年以来、ソフト化されることもなかったためほぼ30年ぶりに我々の前に姿をみせた。
ーブレッソン。ロベール・ブレッソン。
どうだ。なんとフィルムにふさわしい名前だろう。この孤高の作家の名前の響きだけで頬が緩む映画気狂いは私だけではあるまい。
しかもこの映画、私の生まれた年の作品なのだ。
実は数ヶ月前、久々に『ラルジャン』を観て、あらためてその怖さに鳥肌が立った。こんな凄まじい遺作はないんじゃないか、ブレッソンは最期まで恐ろしい人だったのだと思い知った。そのタイミングで公開が決まった『やさしい女』はどうしても観たかった。
しかもドミニク・サンダのデビュー作。あのベルトルッチの作品群で、完成された硬質な美しさで世界を平伏させた究極の美少女である。その前に、VOGUE誌のモデルとして活躍し始めた彼女をブレッソンが見初めた。『やさしい女』はドストエフスキーの原作を下敷きに17歳のドミニク・サンダがカメラに向ける視線だけで1本の映画を撮ってしまった作品だ。
貧しく若く美しい女。金銭的援助を匂わせながら近づいた質屋の男。
二人は心を寄せ、結婚生活を始めるのだが、物語はその若妻の自死のシーンから幕を開ける。ベッドに横たわる息絶えた妻の横で、男は結婚生活を振り返っていく。
愛とは、結婚とは。その不毛ともいえる問いかけに、ブレッソン初のカラー映像が寡黙に動き始める。劇中絶え間なくなり続ける車の騒音をかき消すこともできず、静かに、重く、沈鬱で、男と女の自分本位な言葉が放たれる。全ての成り行きを知っているのは、使用人の老女だけである。
情愛、性欲、征服欲、物欲、嫉妬。正しさなど存在しない感情の行方は噛み合わぬまま、物語は最期を迎える。このフィルムで正しいといえるのは、絶対的ともいえるドミニク・サンダの美しさだけである。]]>
野口久光 シネマ・グラフィックス
http://cassa.exblog.jp/23637040/
2014-10-26T11:26:26+09:00
2014-10-26T11:26:13+09:00
2014-10-26T11:26:13+09:00
cassavetes69
映画
以前もこのブログで取り上げたことがあるが、映画にジャズにとマルチな評論家であり、画家である野口久光さんの展覧会を京都文化博物館でやっているのだ。
いやあ、面白かった。みっちり3時間滞在したが、くすぶっていた映画熱が沸々と湧き出てくるような興奮を覚えた。野口氏自身が編集した東和配給の26作品の名場面集など観ていると、顔が緩む。
私は最近、ヌーベルバーグ以前のフランス映画を観るのが億劫になっていたのだが、この展覧会を観て、想いは180度変わった。敬愛するジャン・ルノワール、ルネ・クレールはもちろん、マルセル・カルネやジュリアン・ディヴィヴィエの作品さえも小品まで追いかけたくなったのだ。特にディヴィヴィエは巨匠として広く認知されながらも、あの淀川長治氏に「甘い。大衆への媚びがある」と言わせしめた人だが、いまは逆にそういう作品こそおさらいしたくなってきている。
きわめつけはなんといってもトリュフォーの『大人は判ってくれない』のポスターだ。この作品が野口氏とトリュフォーの親交にもつながっていくサイドストーリーもふんだんに紹介され、トリュフォー直筆の手紙も展示されている。野口氏によって描かれたこのポスターの少年は、ドワネルそのものであり、つまりトリュフォーその人の自画像なのだ。
もちろん、この作品だけではない。1933年にプロとして描き出した初期の筆づかいも美しいし洒脱である。戦後も『禁じられた遊び』や『モンパルナスの灯』などは、並べて展示された本国フランスのポスターよりも映画のの本質を突いた哀しさの滲む絵柄とレタリングとなっている。(一方でシャブロルの初期作品とは相性が悪いように思われた)
'60年代以降活動の中心となったジャズ評論家としての仕事も紹介されている。当時のジャズ・ジャイアンツたちのスナップを撮る写真家としての仕事も残していて、私が特に感心したのは、日本のどこかの寺社の階段に腰掛けて遠くを眺める若きクインシー・ジョーンズの写真だった。常に構図を意識して描いてきたであろう氏の空間を切り取る技術にも舌を巻いた。
横尾忠則氏の言葉も彼の才能を裏付ける。「こんなに描けるもんじゃない。ぼくなんか最初からギブアップだ」「どのポスターを見ても迷いの痕跡が見当たらない」と。
戦前戦後の日本に、ヨーロッパのモダンでロマンティックな香りを届けてくれたお洒落な才人、野口久光。
先生、憧れのリリアン・ギッシュに似顔絵を手渡しできて良かったですね。]]>
『ブルージャスミン』
http://cassa.exblog.jp/22875351/
2014-07-01T22:04:00+09:00
2014-07-01T22:07:22+09:00
2014-07-01T22:04:44+09:00
cassavetes69
映画
近年はヨーロッパを舞台にすることが多かったウディだが、今回はサンフランシスコが舞台。
こわれゆくセレブ女の、現実とのズレと葛藤を映し出す、大人のための寓話。本作は彼のフィルモグラフィーでも指折りの大ヒットとなった。
莫大な冨を築き、男っぷりのいい名士として振る舞っていた夫がこの世から去った。余裕と優しさを兼ね備えた夫が手がけていたのは実はいかがわしいビジネス。身近な女友達さえも愛人にしてしまう脇の甘さ。現実から目を背け続けてきたジャスミンは、夫の死すらも受け容れることが出来ず、うわごとばかりを口にする。
身の丈で生きる人たちを見下しはするが、ひとりになった自分の中身は空っぽ。一度身に付いた美と身分への執着だけが正気を保っている。かつてヴィヴィアン・リーが演じた『欲望という名の電車』と比較する論調が多いのも理解できる。このあたり、オスカーを受賞したケイト・ブランシェットの演技は、やりすぎず、見事だ。
80歳を目前にしたウディの自虐ぶりも老いてなお健在だ。ウディ自身の機械オンチのコンプレックスを反映したように主人公ジャスミンもパソコンすら扱えない。後半では彼自身の過去の恥辱的なスキャンダルさえも揶揄するようなエピソードを用意していて、思わず笑ってしまった。
私は、美しい女性の転落と狂気を観たかった。それでこの映画を楽しみにして劇場に駆けつけた。しかしながらウディ・アレンは社会との凶暴なズレを撮る人ではなかった。
『ブルージャスミン』は、上質のコメディだった。]]>
『FACT OF LIFE / HE'LL BE THERE WHEN THE SUN GOES DOWN』 Bobby Womack
http://cassa.exblog.jp/22869209/
2014-06-30T22:39:00+09:00
2014-07-01T20:39:01+09:00
2014-06-30T22:39:30+09:00
cassavetes69
音楽
癌とアルツハイマーに侵されていることはきいていたので、驚きは少なかった。
昨年、大阪に赴任して最初にビルボードライブに行こうかと思い立ったのがBOBBY WOMACKのライブだった。仕事の予定が入っていたのもあるが、2012年のライブレポートを読むとなんだか痛々しく感じられたのでためらいがあった。それで行くのをやめた。無理をしてでも行ったほうが良かったのか。それは判らない。
1997年公開の映画『ジャッキー・ブラウン』でBOBBY WOMACKの名前に久々にフォーカスが当たった。犯罪映画のファンでも知る人が少なかったアンソニー・クイン主演の『110番街交差点』('72)のテーマ曲。ブラックミュージックに造詣の深いクエンティン・タランティーノの選択に共感を覚えることができた私は優越感を覚えた。
この人については何度かこのブログでも触れてきたが、彼の魅力はアスファルトから立ちのぼるようなバイオレンスの匂いと、うらぶれた淋しさが同居していること。
その両極の魅力が結実したのが、まさにこの曲『FACT OF LIFE / HE'LL BE THERE WHEN THE SUN GOES DOWN』だ。私は生まれ変わったらこんな声になりたいと憧れるほど、彼の歌声が好きだった。
伝説がまたひとり去った。]]>
『罪の手ざわり』
http://cassa.exblog.jp/22861145/
2014-06-29T21:50:00+09:00
2014-12-13T22:41:14+09:00
2014-06-29T21:50:37+09:00
cassavetes69
映画
いきなり不意を突かれた。今度はいつものジャ・ジャンクーのリズムとは違う。冒頭のバイオレンスシーンは、まるで北野武の作品のように空虚で乾いた暴力が画面を支配する。ジャ・ジャンクーの作品群にはオフィス北野が製作として参加しているが、ここでその両者がはっきりとつながった気がした。
映画は、人を殺める四つの物語から構成される。実際にここ数年で中国で起きた事件を元にしているという。山西省の中年男、重慶の妻子持ち、湖北省の女、広東省の若者。普通に見える人々が、ふとしたきっかけで人生を踏み外していく。彼らが道から外れてしまった暴発の瞬間は、彼らの人生で最も煌めき、全てを自分の意志で決定し、支配できた唯一のときであったかもしれない。
事件を犯し、あるいは巻き込まれていく四つの物語の登場人物たちは、どこかですれ違い、つながり合う。しかしそのつながりは物語として重層的な意味があるわけではなく、ただ静かに、暴力と死へ導く邂逅なのだ。呪いのような連鎖は、ラストのエピローグへと行き着く。
この映画で最も美しかったのは、残虐な飼い主を失った馬車がほろほろと道を横切るシーンであった。不条理な転落を強いられた主人公たちのなかで、唯一救われた存在であったかもしれない。この馬の頼りない歩みを観ているだけで、ジャ・ジャンクーの作品に触れているという快楽を噛み締めることができる。
まだ半年も残しているが、間違いなく今年度のベストワン作品である。]]>
二年目
http://cassa.exblog.jp/22599964/
2014-05-12T22:49:00+09:00
2014-05-12T22:49:39+09:00
2014-05-12T22:49:39+09:00
cassavetes69
食
大阪に来てからというもの、1年間、定年前の窓際族のようにヒマをこいていたワケだが、どうやらそれが上層部にバレたみたいで、今年度から”一番大変”と言われている仕事を預かることになった。それなりにキツい毎日を送っている。
独り暮らしに慣れてきて、料理のレパートリーもだいぶ増えた。超がつくほどの外食派だった私が、佐々木俊尚氏の「家めしこそ、最高のごちそうである。」なんて本を読んでいるくらいである。スーパーやデパ地下での食材や調味料の物色が楽しくて、滞在時間が長くなった。あと5年もたったら、酒の肴の料理本を出版しているだろう。
外食も相変わらず好きだが、こちらでは引きこもりがちなので、いまいち開拓がすすんでいない。最近、美味しかった店といえば、瓦町のビストロ「ワインちゃん」と堂島の韓国料理「喰海」あたりだろうか。魚介は福岡の方がだいぶレベルが高いので、大阪の外食ではどうしても肉食中心になっている。
今回の異動で、そうやすやすとこの地を離れることができなくなってしまった。単身赴任はきっと長くなるだろう。そうなればこの環境を愉しまないと損をしてしまう。
最近、会社帰りに映画を観ることも多くなってきた。ビルボードライブにだって行きたい。ミナミのディープな地域にも、京都や神戸にも足を伸ばしてみたい。歴史好きとしては、史跡巡りにも惹かれる。
二年目の大阪。一年間のモラトリアムを終えて、そろそろ付き合いを深めていく時期にきたようだ。]]>
リハビリ
http://cassa.exblog.jp/22123020/
2014-02-23T22:47:05+09:00
2014-02-23T22:47:16+09:00
2014-02-23T22:47:16+09:00
cassavetes69
その他
最近いくつかの作品に触れて、そろそろブログを復活させようかなとは思っているのだが、いきなり力の入ったものを書くほどの気力もないので、軽い内容から更新をはじめて行こうと思っている。いわゆるリハビリ期間だ。
この冬は、はっきりと自覚できるほど気持が萎えていた。女性がかかわってこない限り、何をするにも億劫になっていたのだが、オリンピックも含めていくつかの優れたコンテンツに接したこと、また春の訪れを感じることでわずかながら上向きな気分になってきたようだ。
最近は主にTwitterでくだらないことばかりさえずっているわけだが、レビューをしたくなるような作品に接したときには、その思いを表現するのに適切なツールとは思えず、どうしてもエキサイトブログに戻ってきたくなる。
実は最近、こちらの運営会社の方とお会いしたばかりなので、敢えてサービス名まで出してちょっと持ち上げてみた。
では、また。]]>
年のおわりに
http://cassa.exblog.jp/21762546/
2013-12-31T13:55:00+09:00
2014-01-02T20:39:50+09:00
2013-12-31T13:55:45+09:00
cassavetes69
その他
仕事面では、肩たたき寸前のように起伏が少なく低調な状況だし、プライベートもひとり部屋でうだうだしている時間が多い。
しかたなく家事は自分でこなすことになったので、自然と手際が良くなって料理のレパートリーも増えた。いまやそのへんの独身女性よりは調理器具も調味料も充実している自信がある。多少成長したのはこの点だけだろうか。
引越した頃は「落ち着いたらあれもこれもしよう」と思っていたのだが、意外と暇になると何もしないもので、映画も読書も音楽の時間も今年は明らかに減った。特に本は昨年までに比べて1/3も買っていない。インプットが少なくて質が悪いので、ブログへのレビューもほとんど滞ったまま。表現する欲求が湧かないのでTwitterにつぶやく程度で充分なのだ。
というわけで、とにかく何も輝くことがなかった今年。人生でもっとも退屈な一年だったと言えるかもしれない。毎年言っていることだが、来年こそは生活習慣を変えてみせる。新しいことを何か始めてみる。年明けからこちらにも頻繁に更新をしていく予定(これも毎年言っている)なので、その変化のほどをお楽しみください。
最後に、今年亡くなったDonald Byrdの’69年の作品『Weasil』を。
それでは良いお年をお過ごしください。
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『TOTAL RESPONSE』Horace Silver
http://cassa.exblog.jp/21427287/
2013-11-08T00:06:00+09:00
2013-11-08T00:06:35+09:00
2013-11-08T00:05:57+09:00
cassavetes69
音楽
Horace Silverの曲では、ぬかるみにずぶずぶと嵌っていくような『Self Portrait No 1』が一番好きだが、アルバムとしては'70年リリースの『TOTAL RESPONSE』の完成度を選ぶ。前述したメルヴィル晩期の傑作群とほぼ同じ時代の作品だ。
ややスタンダードの香りが残るボーカルをフィーチャーしているが、サウンドは極めてファンキー。
なかでも白眉は様々なコンピにも顔を出している『Soul Searchin'』だろう。クラブ・ジャズの定番としての貫禄すら漂う。『Won't You Open Up Your Senses』の甘いピアノの魅力も捨てがたい。とにかく最初から通して聴きたくなるような物語性がある、コンパクトながらも起伏に富んだアルバムだ。
やれやれ、という表情のジャケットも我々中年男子の心情を写していて素敵じゃないか。]]>
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