Betsy |
若い頃に何度も見続けた作品であり、すっとその映画の世界に入っていける。
かつて憧れの対象であったフィルムであり、すぐに感情移入してしまう僕は、高校生の頃この作品のデ・ニーロにあやかって、M65ジャケットやオプティカル社のサングラスを買ってしまったくらいだ。(さらに余談だが、当時の日本では”スコセッシ”という呼び方も定着しておらず、”スコシージ”や”スコルセーセ”という表記さえも目に付いた。)
この作品、前にも書いたように、編集がどうにも甘くて、気になるところも多々あるフィルムでもある。心酔したバーナード・ハーマンの音楽さえも本当は正しい選択だったのか、と邪気が入らないこともない。しかし、僕はこの作品が好きである。
マーティン・スコセッシには、こういう夜の映画を撮ってもらわなければならないのだ。
オスカーを受賞した『ディパーテッド』はクライム・サスペンスとしては高水準で娯楽性も高いが、あの作品はスコセッシ以外の監督でも撮れる作品であって、スコセッシ特有の”不浄な血”が流れていなかった。『タクシー・ドライバー』は、どこからどう切ってもスコセッシの血液があふれ出すフィルムである。
ラストシーンで、バック・ミラー越しに映るベッツィことシビル・シェパードの表情。
このショットだけでも、このフィルムを支持する理由になるだろう。
僕はこの映画のシビル・シェパードが好きだ。
プライドと媚びた甘えが混在する、憂いのある目。
この目と、サイドミラー越しに夜のニューヨークを射抜くデ・ニーロの目。
その猥雑な交錯こそが、この映画ならではの快楽である。