モスコミュールへの謝罪 |
したり顔で、「シンガポール・スリング」をオーダーしながら、サマセット・モームとラッフルズ・ホテルとの関係について薀蓄をたれる男に何度も出くわした時代だ。
その頃、女性がよくオーダーしていたのは、「モスコミュール」だった。今も定番カクテルの一つとして有名だ。
スミノフのウォッカとライムジュースとジンジャー・ビアー(今はジンジャー・エール)という組み合わせを銅製のマグカップに注ぐのが本来のレシピだと言われている。
しかし、僕自身はオーダーした覚えが無い。勿論、飲んだことがないわけじゃないが、「モスコミュール」という響きが、バブル期の「気取った勘違い女」という恥ずかしさを連想してしまい、「いい年した男が飲む酒じゃない」と遠ざけてきた。
先日、深夜のミーティングを終えて出かけた中洲で、小さい路地に入ったBARに案内された。
その店では、「モスコミュール」が有名だという。抵抗を感じながらオーダーを躊躇っていると、液体に漬けこまれた大瓶詰めの生姜をテーブルに置かれた。長崎から取り寄せているモスコミュールのための生姜で、2ヶ月もウォッカに漬け込むのだという。
ここまでされて、オーダーしないわけにはいかない。
僕は20年の飲酒歴で初めて、「モスコミュール」をオーダーした。
外側にうっすらと水滴のついた銅製のマグカップがコースターの上に置かれた。
カットされたライムの隣に、2㎝の厚さでスライスされた生姜が浮かんでいる。
冷たいマグカップを持つ。
流し込んだひとくち目は予想以上に冷たく、喉から胃へのルートが明らかになる。
うまい、そして切れ味が鋭い。
流し込んだジンジャーエールに加え、漬け込んだ生姜の香りが気持ちいい。
この上なく冷えきっているから、ややクセのある香りもすんなりと受け入れられる。
なるほど、ここまで冷やすには銅製のマグカップが必要なわけだ。
気がつくと、ひとくち目でマグカップの半分以上を飲んでいた。
なるほど、これが「モスコミュール」か。
ハリウッドでこのカクテルが生まれた頃、おそらくスライスされた生姜は添えられていなかっただろう。これはオリジナルを超えているんじゃないか。
たまには自分の中の”タブー”を犯してみると、思わぬ出会いが待っているのかもしれない。
じんわり唾液が口の中に広がって、思わず、唸ってしまうほど。
完全にオリジナルを越えております。
ため息が出そうなほど、喉越しと美味しさが、伝わります。
飲みたい・・・!(ゴクリ)
昔、バーテンダーでさえ、「誰でも彼でもモスコミュールだからね・・・」と呆れていたせいか、拒絶していたこのお酒ですが、本当に美味しかったです。また今週も行こうと企んでいます。
読んでいて飲みたくなってしまいました。スライスした生姜ですか。試してみます。
ところで、カサヴェテス、私も好きな監督です。
「オープニングナイト」が好きで、いや、やっぱり「こわれゆく女」が一番かな。迷うなあ・・^^;
ジョン・カサヴェテス、お好きなのですね。私も彼の映画には只ならぬ思いがありまして、上記の2作は勿論、『ミニーとモスコウィッツ』『ハズバンズ』『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』『ラヴ・ストリームス』どれも捨てがたいですね。
普段飲まないモスコミュールをオーダーしてしまいます。
初めて飲んだときは、衝撃をうけました。
普通のグラスだと、そこまで思わなかったもしれませんが
銅製のマグカップででてくるところが完璧です。
たぶん、あなたはこの店に行ったことがあると思っていました。私も以前から話は聞いていましたが、そんなに気がすすまなかったんですね。しかし、見事に期待を裏切ってくれました。
仰るとおり、銅製のマグカップが効いていますね。
これからもどうぞ。例の件もフォローしておきますのでよろしく。