2006年 07月 17日
『雨の中の女』 |
フランシス・フォード・コッポラの名前から連想する映画は何だろう。
おそらく『ゴッド・ファーザー』シリーズが一番多い回答であろうことは想像に難くないし、愛すべき失敗作『地獄の黙示録』や僕の偏愛する『カンバセーション・・・盗聴』を挙げる映画ファンもきっと少なくないだろう。ダイアン・レインを相次いで起用した'80年代前半の作品を甘酸っぱい思い出と共に口にする人もいるだろう。
僕ならこの映画、『雨の中の女』は外せない。
梅雨の季節には少し出遅れてしまったが、コッポラのデビュー期に隠れたロードムーヴィーの秀作が存在した、という事実にもっと触れて欲しい。
男と女のロードムーヴィーでありながら、旅をリードするのは「女」である。
知的障害を持つ、元フットボールの花形選手だった男が、女に引っ張られていく物語である。
ニューシネマ期特有のやるせなさが滲む画面だが、それだけでこの映画に惚れ込むほど僕も初心ではない。特に「雨」の撮影に凝っているわけではないのだが、この映画の「雨」は実に淋しげでいい。背伸びして小理屈をこねたがる映画青年は、この映画の知的障害者の型通りの扱いに不満を覚えるようだが、そんなの放っておけ。この「雨」の淋しさが、肌から染み入ってきたとすれば、それでこの作品に対しての映画体験は成功なのだ。
しかもその淋しさを体現する俳優が、ロバート・デュバルとジェームズ・カーンなのだから、こんな贅沢は滅多にないと心得ておく必要がある。
関係こそ決裂してしまったが、この『雨の中の女』というを映画を観れば、コッポラがなぜヴィム・ヴェンダースと『ハメット』を撮りたかったかが判る。
僕の好みでいえば、アメリカン・ニューシネマ期のロードムーヴィーでは、この『雨の中の女』と、スピルバーグの『続・激突 カージャック』を強く推したい。共に二人の人気作家の埋もれがちな作品ではあるが。
この2本と見比べたら、傑作と名高い『俺たちに明日はない』などがいかに雑な作りかわかる筈だ。
このところ、日本の梅雨も熱帯の雨期のような情緒の欠けたものになってしまった。
この映画が胸に響くのは、去りし日の「雨」への感傷的な想いが含まれているからかもしれない。今年は梅雨明けまでに、そんな雨に逢えるだろうか。
おそらく『ゴッド・ファーザー』シリーズが一番多い回答であろうことは想像に難くないし、愛すべき失敗作『地獄の黙示録』や僕の偏愛する『カンバセーション・・・盗聴』を挙げる映画ファンもきっと少なくないだろう。ダイアン・レインを相次いで起用した'80年代前半の作品を甘酸っぱい思い出と共に口にする人もいるだろう。
僕ならこの映画、『雨の中の女』は外せない。
梅雨の季節には少し出遅れてしまったが、コッポラのデビュー期に隠れたロードムーヴィーの秀作が存在した、という事実にもっと触れて欲しい。
男と女のロードムーヴィーでありながら、旅をリードするのは「女」である。
知的障害を持つ、元フットボールの花形選手だった男が、女に引っ張られていく物語である。
ニューシネマ期特有のやるせなさが滲む画面だが、それだけでこの映画に惚れ込むほど僕も初心ではない。特に「雨」の撮影に凝っているわけではないのだが、この映画の「雨」は実に淋しげでいい。背伸びして小理屈をこねたがる映画青年は、この映画の知的障害者の型通りの扱いに不満を覚えるようだが、そんなの放っておけ。この「雨」の淋しさが、肌から染み入ってきたとすれば、それでこの作品に対しての映画体験は成功なのだ。
しかもその淋しさを体現する俳優が、ロバート・デュバルとジェームズ・カーンなのだから、こんな贅沢は滅多にないと心得ておく必要がある。
関係こそ決裂してしまったが、この『雨の中の女』というを映画を観れば、コッポラがなぜヴィム・ヴェンダースと『ハメット』を撮りたかったかが判る。
僕の好みでいえば、アメリカン・ニューシネマ期のロードムーヴィーでは、この『雨の中の女』と、スピルバーグの『続・激突 カージャック』を強く推したい。共に二人の人気作家の埋もれがちな作品ではあるが。
この2本と見比べたら、傑作と名高い『俺たちに明日はない』などがいかに雑な作りかわかる筈だ。
このところ、日本の梅雨も熱帯の雨期のような情緒の欠けたものになってしまった。
この映画が胸に響くのは、去りし日の「雨」への感傷的な想いが含まれているからかもしれない。今年は梅雨明けまでに、そんな雨に逢えるだろうか。
by cassavetes69
| 2006-07-17 21:50
| 映画
|
Comments(6)
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tanatali3 at 2006-07-23 11:28
それにしても、日本の大雨といい、こちらの不順な天候といい、確かに情緒がありません。
去りし日の「雨」への感傷的な想いとして心に残っている映画は、「シェルブールの雨傘」「雨の訪問者」あたりですね。
去りし日の「雨」への感傷的な想いとして心に残っている映画は、「シェルブールの雨傘」「雨の訪問者」あたりですね。
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cassavetes69 at 2006-07-23 12:28
tanatali3さん、『シェルブールの雨傘』は言うに及ばずですが、ルネ・クレマンの『雨の訪問者』とは嬉しいですね。
この映画もフランシス・レイの音楽に、脚本はジャプリゾ。この時代のフランスのノワール、特にジャプリゾものは怪しさとインチキ臭さがプンプンしていて好きですねぇ。映画的な完成度は別として惹かれます。
私は、メルヴィルの『リスボン特急』の雨が異常なくらい好きですね。
この映画もフランシス・レイの音楽に、脚本はジャプリゾ。この時代のフランスのノワール、特にジャプリゾものは怪しさとインチキ臭さがプンプンしていて好きですねぇ。映画的な完成度は別として惹かれます。
私は、メルヴィルの『リスボン特急』の雨が異常なくらい好きですね。
お久しぶりです、九州は凄い雨で避難されている方もいらっしゃるみたいですが、何事もなかったでしょうか?
同じ雨でも、“Singin' In The Rain♪”と口ずさみながら傘もささず家から飛び出したくなるような、そんな雨にしてほしいものですね。
同じ雨でも、“Singin' In The Rain♪”と口ずさみながら傘もささず家から飛び出したくなるような、そんな雨にしてほしいものですね。
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cassavetes69 at 2006-07-24 23:47
micchiiさん、お久しぶりで。
九州も南は大変ですが、ここ福岡は大丈夫です。
私も先週はほとんど不在だったので、あまり実感が無いだけかもしれません。“Singin' In The Rain♪”も勿論楽しいですが、暗い私は高校の頃観た『裸足の伯爵夫人』の雨も恋しいですね。
映画には「にわか雨」が効果的な作品も多いですね。『キー・ラーゴ』みたいに暴風雨が素敵な映画もありますし。
今度、そういうテーマで語ってみるもの面白いかもしれません。
九州も南は大変ですが、ここ福岡は大丈夫です。
私も先週はほとんど不在だったので、あまり実感が無いだけかもしれません。“Singin' In The Rain♪”も勿論楽しいですが、暗い私は高校の頃観た『裸足の伯爵夫人』の雨も恋しいですね。
映画には「にわか雨」が効果的な作品も多いですね。『キー・ラーゴ』みたいに暴風雨が素敵な映画もありますし。
今度、そういうテーマで語ってみるもの面白いかもしれません。
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at 2006-09-18 04:11
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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cassavetes69 at 2006-09-19 00:24
鍵様。
そう、『俺たちに明日はない』の適当さ・雑さを愛する気持ちもよく判るんです。アメリカン・ニューシネマなんて、裏を返せば雑な映画も多いんですが、どうしても気になりますよね。私は、'70年代アメリカの犯罪映画を専門(何の?)にしたいと思っていたくらいなので、お気持ちはよく判ります。
『雨の中の女』はお薦めしたいですね。少し淋しい気分になりますが。
おやすみなさい。
そう、『俺たちに明日はない』の適当さ・雑さを愛する気持ちもよく判るんです。アメリカン・ニューシネマなんて、裏を返せば雑な映画も多いんですが、どうしても気になりますよね。私は、'70年代アメリカの犯罪映画を専門(何の?)にしたいと思っていたくらいなので、お気持ちはよく判ります。
『雨の中の女』はお薦めしたいですね。少し淋しい気分になりますが。
おやすみなさい。