2005年 10月 08日
池部良、『早春』と殴られる男 |
もう10年以上前になると思うが、雑誌BRUTUSで、「殴られる男」という特集があった。
若き日のアラン・ドロンやニコラス・ケイジをはじめとする、くせのあるスター達とその作品を並べて、殴られるのが似合う男はだからモテる、と言い切った内容の記事だった。
そこで日本の芸能界を代表して選ばれていたのが、池部良だった。
当時、すでに70歳を大きく超えていたはずだが、上等のシャツをさらりと着こなした姿には、なんともいえない色気があって、印象的だった。
池部良の主演作で僕が大好きな映画が、小津安二郎の『早春』だ。
あまり評判の芳しくない'56年の作品だが、この作品の男女のトライアングルはゾクリとするような怖さがある。
優柔不断で身勝手なサラリーマンを演じる池部良。
淡島千景演じる妻との間に出来た一粒種を亡くし、それからは冷え切った夫婦関係を過ごしている。そこに「金魚」と呼ばれる小悪魔のような岸恵子が絡んでくる、という構図である。
それぞれの距離感が、また怖くて面白いのである。
ヴェンダースやジャームッシュらの登場と賛辞により、小津の名前は、現代でも一般的に知られるようになった。しかし、そのほとんどは、「古き日本の情緒を懐かしむ」といった紋切り型のトーンで片付けている。
僕自身は、小津安二郎という人は、危険な毒性を含んだ、極めてモダンな映画作家だと思っている。不倫や近親相姦というテーマを、美しく精緻な黒白映像の中に溶け込ませては、安易に悟られないように炙り出す。
このフィルムのトライアングルもまた、そういった小津の特性が良く表われていて、我々を静かで怪しい興奮にいざなう。
この『早春』に改めて触れ、外見に恵まれ、粗忽さと手に負えない優しさが共存し、知性的でもある池部良は、確かに日本を代表する「殴られる男」に相応しいような気がした。
いや、もしかしたら、女性から見ると、いい男というものは総じて殴りたくなる対象なのだろうか。
そういえば、僕はこれまで女性に殴られた記憶は無い。
若き日のアラン・ドロンやニコラス・ケイジをはじめとする、くせのあるスター達とその作品を並べて、殴られるのが似合う男はだからモテる、と言い切った内容の記事だった。
そこで日本の芸能界を代表して選ばれていたのが、池部良だった。
当時、すでに70歳を大きく超えていたはずだが、上等のシャツをさらりと着こなした姿には、なんともいえない色気があって、印象的だった。
池部良の主演作で僕が大好きな映画が、小津安二郎の『早春』だ。
あまり評判の芳しくない'56年の作品だが、この作品の男女のトライアングルはゾクリとするような怖さがある。
優柔不断で身勝手なサラリーマンを演じる池部良。
淡島千景演じる妻との間に出来た一粒種を亡くし、それからは冷え切った夫婦関係を過ごしている。そこに「金魚」と呼ばれる小悪魔のような岸恵子が絡んでくる、という構図である。
それぞれの距離感が、また怖くて面白いのである。
ヴェンダースやジャームッシュらの登場と賛辞により、小津の名前は、現代でも一般的に知られるようになった。しかし、そのほとんどは、「古き日本の情緒を懐かしむ」といった紋切り型のトーンで片付けている。
僕自身は、小津安二郎という人は、危険な毒性を含んだ、極めてモダンな映画作家だと思っている。不倫や近親相姦というテーマを、美しく精緻な黒白映像の中に溶け込ませては、安易に悟られないように炙り出す。
このフィルムのトライアングルもまた、そういった小津の特性が良く表われていて、我々を静かで怪しい興奮にいざなう。
この『早春』に改めて触れ、外見に恵まれ、粗忽さと手に負えない優しさが共存し、知性的でもある池部良は、確かに日本を代表する「殴られる男」に相応しいような気がした。
いや、もしかしたら、女性から見ると、いい男というものは総じて殴りたくなる対象なのだろうか。
そういえば、僕はこれまで女性に殴られた記憶は無い。
by cassavetes69
| 2005-10-08 21:13
| 映画
|
Comments(1)
Commented
at 2005-10-11 00:19
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。