2005年 04月 30日
『美女と野獣』 |
「不安定」だということは厄介なことだが、時に美しく、魅力でもある。
ジャン・コクトーの『美女と野獣』は「危険な童話」に接しているという後ろめたさを伴う。
背徳の行為を行っているかのような錯覚を覚えるのだ。
コクトーは、詩人であり、絵描きであり、映画作家であり、陶芸その他にもマルチな才能を輝かせたゲイのアヘン中毒者であった。
僕はこのBlogで「芸術」という言葉を使うことに躊躇いを感じている。
「映画芸術」というものは厳然と存在するが、この言葉が、映画や音楽を危険なカテゴライズへ導いてしまい、作品そのものを貶める危険も孕んでいるからだ。
しかし、このコクトーの'46年のモノクロフィルムに関してだけは、禁を破って「芸術映画」という冠を捧げたくなる。
コクトーの手書きによるタイトルの文字さえも、まるで神に生を与えられたかのような神聖な振る舞いを見せる。コクトー自身も愛したという主人公ジャン・マレーの輝くばかりの美しさ。
この不安定な特撮を笑いたければ、笑うがいい。
しかし、この不安定さが、この童話を怪しい神秘の世界へいざなっているのである。
決して高価ではないが、精緻で美しいガラス細工の輝きのようではないか。
同じコクトーによる傑作『オルフェ』とは明らかに違った、この脆さ、儚さは何なのだろうか。
処女作にしか許されない映画的な特権なのだろうか。
ジャン・コクトーの『美女と野獣』は「危険な童話」に接しているという後ろめたさを伴う。
背徳の行為を行っているかのような錯覚を覚えるのだ。
コクトーは、詩人であり、絵描きであり、映画作家であり、陶芸その他にもマルチな才能を輝かせたゲイのアヘン中毒者であった。
僕はこのBlogで「芸術」という言葉を使うことに躊躇いを感じている。
「映画芸術」というものは厳然と存在するが、この言葉が、映画や音楽を危険なカテゴライズへ導いてしまい、作品そのものを貶める危険も孕んでいるからだ。
しかし、このコクトーの'46年のモノクロフィルムに関してだけは、禁を破って「芸術映画」という冠を捧げたくなる。
コクトーの手書きによるタイトルの文字さえも、まるで神に生を与えられたかのような神聖な振る舞いを見せる。コクトー自身も愛したという主人公ジャン・マレーの輝くばかりの美しさ。
この不安定な特撮を笑いたければ、笑うがいい。
しかし、この不安定さが、この童話を怪しい神秘の世界へいざなっているのである。
決して高価ではないが、精緻で美しいガラス細工の輝きのようではないか。
同じコクトーによる傑作『オルフェ』とは明らかに違った、この脆さ、儚さは何なのだろうか。
処女作にしか許されない映画的な特権なのだろうか。
by cassavetes69
| 2005-04-30 23:34
| 映画
|
Comments(6)
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show-zono at 2005-05-01 21:45
>「不安定」だということは厄介なことだが、時に美しく、魅力でもある。
ジャンルは違えどお互いの感性の酷似性をいつも感じています。
そして、その偏愛性についても。
ジャンルは違えどお互いの感性の酷似性をいつも感じています。
そして、その偏愛性についても。
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cassavetes69 at 2005-05-02 00:27
show-zonoさん、コメントありがとうございます。
>感性の酷似性をいつも感じています。
そう言って頂くことは、大変ありがたく受け止めています。
同列に語るのは失礼ですが、お互いに、「弱さ」や「脆さ」を内包しているのかもしれませんね。だからこそ、惹かれる対象も似ているのかもしれません。
私に限って言えば、その自身の特性を完全に排除できず、あるときは肯定に走ることさえあります。そのことで、人を傷つけることもあります。もっと、冷静に、客観的に自分を見つめてくれる「目」と「声」があればと、日頃から感じている一人です。
ちなみに、今回の記事は、とある女性Bloggerに捧げる記事でした。
「あなた」に、この想いは届いたでしょうか?
>感性の酷似性をいつも感じています。
そう言って頂くことは、大変ありがたく受け止めています。
同列に語るのは失礼ですが、お互いに、「弱さ」や「脆さ」を内包しているのかもしれませんね。だからこそ、惹かれる対象も似ているのかもしれません。
私に限って言えば、その自身の特性を完全に排除できず、あるときは肯定に走ることさえあります。そのことで、人を傷つけることもあります。もっと、冷静に、客観的に自分を見つめてくれる「目」と「声」があればと、日頃から感じている一人です。
ちなみに、今回の記事は、とある女性Bloggerに捧げる記事でした。
「あなた」に、この想いは届いたでしょうか?
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at 2005-05-02 23:10
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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at 2005-05-02 23:11
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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cassavetes69 at 2005-05-02 23:37
鍵様。奥ゆかしいあなたから真摯なコメントを頂き、私も嬉しいです。
私も「勘違い野郎」と取られるのを恐れる人間ですので、お気持ちはよくわかります。どうかお気遣い無く、コメント下さい。
私は文学には不義理をしている者ですが、あなたにはなんというか非常にセンシティブなものを感じていました。私は、器用(卑怯?)な人間ですので、仰せのように御す術も身に着けております。
受け止めて頂いて、感謝します。それで充分です。
私も「勘違い野郎」と取られるのを恐れる人間ですので、お気持ちはよくわかります。どうかお気遣い無く、コメント下さい。
私は文学には不義理をしている者ですが、あなたにはなんというか非常にセンシティブなものを感じていました。私は、器用(卑怯?)な人間ですので、仰せのように御す術も身に着けております。
受け止めて頂いて、感謝します。それで充分です。
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at 2005-05-02 23:42
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。