『きりひと讃歌』 |
そのいびつな部分が露出したときもまた、天才は天才だ。
手塚治虫にもまた、暗い、いびつな部分があり、精神的にもかなり不安定な時期があったと聞く。彼のダークサイドが吹き出た陰鬱な作品も数多く発表されているが、僕はその時期の作品を特に好む。
『きりひと讃歌』という作品がある。
立川談志が『ブラックジャック』の解説で絶賛しているのを見たのが気になって、探し回った。全3巻を一気に読み上げ、改めて手塚治虫の才能に慄然とした。
内科医 小山内桐人は、犬のような体になってしまう新種の奇病「モンモウ病」の病因調査を続ける。そのうちに、自分自身もモンモウ病に侵されてしまう。犬のように変わり果てる彼と、その周囲の人物をシャープに捉えている。権力、憎悪、陰謀はダークサイドの彼が得意とするところである。黒澤明の『悪い奴らはよく眠る』や『天国と地獄』を見ているような錯覚に陥るタッチだ。そして安易に愛を描かない。女の怖さの描き方が実に鋭い。センチメンタルに流される甘いだけの愛に対し、手塚治虫は憎しみさえ抱いているようだ。
『きりひと讃歌』もまた、業の深い物語である。
同じ頃に、『ばるぼら』というのも、ありましたね。
手塚氏は自らを、「コンプレックスと、嫉妬心の塊」と、分析していました。
私の師匠(リオン・ウェア)も、同じ事を言います。
(最近更新がないので、淋しいです)
更新が出来ていないのは、仕事の忙しさゆえです。コメントを入れるのがやっとです。