走れ風と共に、悲しみ捨てて |
時計を気にしながらややこしい商談が終わり、エレベーターが1Fに到着したのはのは19:13分。
「貴様は馬鹿か!やっと話を締めようかというときにテメエの馬鹿息子のこぼれ話なんかするんじゃねえ!」同行の上役を怒鳴りつけたい気持ちを抑え、一人、小走りで品川駅へ急ぐ。電車が来た。19:22分。
羽田空港の到着時刻は19:47分。フライトは20:00ちょうど。定刻通り。
久々に全力で走った。♪空港の長いエスカレーターをいくつも駆け上がっているうちに、足がぬかるみにはまったように動かなくなった。手荷物検査場を通過したのは19:52分。最近は15分前までのタイムリミットが厳格化されているが、「連絡済ですよ」と伝えると、無線で連絡を取りながら通してくれた。もちろん、嘘だ。
大きく肩で息をしながら、酸欠の青白い顔で搭乗口をタッチ&ゴーでくぐりぬけた。
「救心」を手に微笑む丘みつ子の顔が頭をよぎった。
ダニエル・クレイグよ。僕より1つ年上なのにあそこまで動けるあんたはすごい。
ボンド役者にそういう敬意を抱きつつ、無事帰り着いた自宅で『007/慰めの報酬』を観た。
今朝方、ふくらはぎのこむら返りで目を覚ました。
もうジェームズ・ボンド役は無理だな、と手帳に並べた「僕の夢リスト」にひとつ×印をつけた